今回は久しぶりのオプションに関してです。皆さんはオプション取引を行ったことがあるでしょうか。先物取引を一通りやってみて、オプションに興味を持つ人もいるのでしょうか。
しかし、オプションは難しそうというイメージが依然としてあります。今回は先物取引とオプション取引の一番の大きな違いと、オプション取引で超重要なグリークスを、できるだけイメージ重視でまとめてみました(したがって今回は数学的な厳密性は重視しておりません)。
先物取引とオプション取引の違いとは
まず先物取引とオプション取引の大きな違いについて述べたいと思います。それは一言で言うと、損益の理由が分かりやすいかどうかです。
まず先物で考えてみます。例えば現在の日経平均の値段が20000円だとします。そしてこれをロング(買い持ち)したとします。相場が思惑通り上昇し、20050円まであがりました。ここで利益を確定すると、50円分の利益となります。
今度はオプションです。日経平均の値段が20000円の時に、行使価格が20000円のコールオプションを購入します。先ほどと同じく20050円まで上昇しました。ここで利益を確定したとします。その場合、いくらの儲けとなるでしょう。
答えは、必ずしも50円分とは限らないということです。ここがオプションの難しさの一つと言えます。つまりオプションで儲けるためには、単純な値動きだけでは測れないということになります。(まずそもそもコールオプション、プットオプションという言葉に馴染みがない方は「コール・オプションとプット・オプションのまとめ」を読んでおいてください)
オプションの損益の源泉とは
上記の例ですが、なぜ50円分とは限らないのでしょうか。なぜならばオプションの損益の源泉となる要素はいくつかあるからです。そのそれぞれの要素を数値化したものがグリークスと呼ばれるものになります。
ここでは以下のグリークスに触れたいと思います。またそれぞれを一言で表してみました。
- デルタ = その原資産価格の方向性 / オプションを先物換算したもの
- ガンマ = デルタの変わる速さ(ポジション量の増減する速さ)
- ベガ = ボラティリティ(価格変動)
- セータ = 満期までの時間
その他にもありますが、特に初心者はまずこれだけ知っておければと思います。
デルタ
デルタとは一言で言うと、相場の向きがあっていたかということになります。例えば日経平均が20000円の時に、この日経平均株価が上昇すると思ってコールオプションを買ったとします。その通りに相場が上昇すれば、デルタでは儲けられたということになります。
逆にプットオプションの場合、一般的にデルタはマイナスで表記されます。つまり20000円の時にプットオプションを購入し、日経平均が下落すれば利益につながるということになります。
オプションを勉強した方では、デルタヘッジというものを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。当ブログでも過去に少しだけ触れたことがありました。
デルタヘッジとは相場の方向性の予想が外れていたとしても、負けにくくするオペレーションになります。
コールオプションを買った場合、相場が上昇すれば、利益につながると話しました。実際にコールオプションを購入し、プレミアムとして10万円払ったとします。
もし相場が下落方向に言った場合、オプションの価値が10万円からどんどん減っていくことになります。しかし、ここでデルタヘッジとして先物をショート(売り持ち)したとします。そうすると、先物のショートで利益が相殺され、資産が毀損されにくくなります。
またもう少し踏み込むと、「デルタは、オプションを先物換算したもの」となります。先ほどのコールオプション、プットオプションで、デルタがプラス、あるいはマイナスと出る(オプションのタイプとロング/ショートによって異なる)という話がありました。
これはつまり先物をロングしているか、ショートしているか、という意味になります。ここで議論となっていることは方向性ということになります。もう一つ重要な情報として、その先物をいくら分ロング(あるいはショート)しているかということになります。
例えば、デルタが+1000万円と出ていた場合、1000万円分先物をロングしていることと同じことになります。もしあなたが通常先物をミニ1枚で取引されている場合、現在の日経平均先物の値段で言うと200万円ほどの取引をしていることになり、1000万円というと5枚分のリスクを取っていることになってしまいます。
つまり日経平均が20000円の時に、コールオプションを購入し、デルタが1000万円となっていたら、日経平均ミニ先物で5枚程度のポジションを持っていることになり、それが果たして適正なポジション量なのかは、考える必要があります。
ガンマ
ガンマは少し難しいですが、デルタの変わる速さ(ポジション量の増減する速さ)ということになります。上で、デルタは「デルタは、オプションを先物換算したもの」としました。
そして、デルタが1000万円の場合、1000万円分の先物を持っていることと同じという説明をしました。オプションの場合、このデルタは常に変動します。
なぜならば、このデルタは、数学的にはオプションが行使される確率を意味しているからです。
現在の日経平均が20000円で、行使価格が20000円、満期が1か月後場合、概ねこのオプションが満期に行使される確率は50%と考えることができます。
しかし、同じ条件で、行使価格が10000円とした場合、このオプションが行使される確率はかなり高くなるでしょう。つまりデルタが大きくなるのです。
このように原資産の価格と、オプションの行使価格で、デルタは決まってくるのですが、常にこのデルタは変動するということになります。
このデルタの変動する速さを示したものがガンマになります。
このガンマのイメージを少し説明します。例えば、デルタで500万円分のポジションを持っていたとします。これが1か月かけてゆっくり700万円に上がっていく場合と、10秒で700万円に上がっていく場合とでは、スピード感が違うことがお分かりいただけるのではないだろうか。
先ほどこのデルタはオプションを先物換算したものとし、ガンマはポジション量の増減する速さとしました。この先物換算したリスク量の変化の速さを示したものがガンマとなります。
ベガ
ベガはボラティリティによるオプションの価値の変化になります。オプションの醍醐味は、このボラティリティを取引できるということになります。
なぜならば、ボラティリティを取引しない、デルタのみの取引であれば先物を取引することで用が足りるからです。つまり日経平均があまり動いていないとき(値幅がなくなっているとき)は、ボラティリティが低くなっています。
これからマーケットが動くのではというときは、ベガがプラスの取引をすればよいのです。オプションは購入(ロング)すればベガロング、売却(ショート)すればベガショートとなります。ここではコールオプション、プットオプションは関係ないです。単純にオプションの売買で、ベガポジションが決まります。
今後マーケットが動きそうだと思うのであれば、まずはオプションを購入してみるのが良いかもしれません。
セータ
セータは満期までの時間で決まります。これがオプションをロングする一番のデメリットになります。オプションをロングした場合、満期までの時間が近くなっていく(時間が過ぎていく)だけで、オプションの価値は減少していきます。
イメージはこうです。現在の日経平均は20000円、行使価格は21000円のコールオプションを購入。満期が1か月後のものと、明日のものを比較したときに、どちらが21000円以上になる確率が高いでしょうか。
答えは1か月後になります。1日で1000円動くということは現在ではそこまで多くありません。したがって、満期までの時間が長ければ長いほど、オプションには時間価値というものができ、オプションの価値は高くなります。
逆を言えば、時間が経つにつれ、オプションの価値は低減していきます。
なぜオプションを取引するか
ここまでの説明を踏まえて、先物にはないオプションのメリットをお話したいと思います。それは先物では捕捉できない利益の機会を狙うことができるからです。
つまり単純にデルタだけを狙うのであれば、先物を取引すれば十分です。しかし、オプションにはその他の要素があります。
例えば、日経平均株価は上がりそうだけど、そこまで大きな変動は見込めなさそうだし、1週間と言った短期ではなく、2か月後くらい先を考えて取引したい、といったカスタマイズされた戦略が取りやすいのがオプションです。
つまり上記のグリークスを操作することで、上のようなシナリオに沿ったポジションを取ることができるのです。オプションは奥が深いですが、正しく使えば収益の向上につながってきます。ぜひオプションも活用してみてください。