お金の話

為替ヘッジと期待リターンの関係性について

先日、ツイッターでたまたま興味深いツイートを拝見しました。

それは為替ヘッジによる期待リターンへの影響というものです。為替ヘッジは期待リターンをゼロにしてしまうのか、為替ヘッジは期待リターンをどの程度押し下げるのか、逆にリターンを上げる場合もあるのか

今回はまとめてみたいと思います。

そもそも為替ヘッジとは

為替ヘッジとは為替のフォワードという取引を使い、ある日にちに予め決まった為替レートで為替の取引を行うことを言います。

今、為替レートを決定する(固定する)ことによって、今後FXのマーケットがどう動こうと、そのある日にちに行う為替取引による為替の損益が生まれなくなることを指しています。

例えば、3か月後にドルを円に100円で交換することを今決める、といったことです。まずは為替ヘッジはこのような為替レートを決める取引だということをご理解ください。

為替ヘッジは期待リターンはゼロにするわけではない

まず第一に為替ヘッジによって期待リターンがゼロになるわけではないということを述べたいと思います。

以前に為替ヘッジに関して「為替予約はこう行われる 為替ヘッジの実務であるフォワード取引の計算方法とは」という記事を書いたことがあります。

そこでこんな例を挙げてみました(以下、抜粋)。

この為替のフォワードレートはそれぞれの国の金利を使って考えます。例えば現座の為替レートは1ドル100円だとします。ここで、1年のドルの金利が5%、円の金利が1%だとします。

そうるすと1年後のドルの価値は1.05ドル、円の価値は101円になっています。さてここでそれぞれの通貨にとってフェアな価値というのはいくらになるでしょう。

101/1.05をしますと、約96.19円という数字が出てきます。これがどちらの通貨にとってもフェアな水準と言えます。そして、現在の為替レートである100円からこの96.19円を差し引いた3.81円というのが為替のヘッジコストと考えられます。

この場合、理論値は96.19円になるのですが、この理論値で為替のフォワード取引を行った場合に、期待リターンがゼロ(裁定の効かない状況)となります。

しかし実際の為替のフォワードのレートというのは、マーケットの需給によって決まります。したがって、実際は96.30というレートだったり、96.10というレートが出たりします。

つまりアービトラージができる状況になるのです。実際、マーケットでは円をドルに変えて、同時にドル金利(デポレート)の取引と、為替のフォワード取引を同時に行うことで、「理屈上」無リスクの裁定取引を行おうというニーズがあります。

したがって、必ずしも為替のフェアバリューで取引ができるわけではないので、期待リターンはゼロとは限らないと考えます。

為替ヘッジは為替リスクにのみ作用する

ここまでの話と同じことですが、「為替ヘッジをかけると期待リターンはゼロ」という考え方を、少し別の角度から考えてみたいと思います。

例えば、シティバンクの債券を購入し、お金が返ってくるときに、円高になっていると困るので為替ヘッジを行うと考えてみます。

満期までの期間が1年だとすれば、1年後にドルを円に〇円で替える取引(為替ヘッジ取引)を行います。

そうなると期待リターンはゼロになるのかというと、そうではないと思います。

なぜならば、そこにはクレジットリスク(信用リスク)が残るからです。つまりクレジットリスクを取るということは残るので、それに伴うリターンも残るはずと考えられます。

為替ヘッジはあくまでも為替リスクにのみ作用するので、クレジットリスクのヘッジはまた別途考える必要があります。

しかし、ちょっとややこしくはなりますが、前項の為替のフォワードの計算を行ったときのドル金利が、米国債金利をベースに考えていた場合、米国債の為替ヘッジを行えば、期待リターンはゼロになります。

為替のフォワード取引はあくまでもどのように理論値を計算しているかではなく、マーケットメイカーによる値付けになるので、裏側でどのようなロジックが走っているかは分からないのですが、もし仮にそのドル金利を米国債金利と仮定するのであれば、そのケースにおいてのみ、米国債の為替ヘッジは期待リターンはゼロになります。

為替ヘッジのコストとは

更に一歩進んで、為替ヘッジのコストについて考えてみたいと思います。ここでは先ほどから例に出している為替のフォワード取引(FXスワップ、為替スワップとも呼ばれる)を例に考えてみたいと思います。

先に計算したように、現在の為替レートとフォワード価格の差が為替のヘッジコストとして考えられます。上の例では、3.81円になります。

この計算例からも分かるように、基本的にはマーケットの需給で為替のフォワード価格は決まるものの、ベースとなっている考え方に、2国間の金利差があります。

つまりドル円の場合、ドルの金利の方が日本円の金利よりも高いために、ディスカウント(現在のスポットレートよりも為替のフォワードレートが円高寄り)になります。

しかし、繰り返しになりますが、これは金利差で決まります。

実はユーロ円の場合、2019年7月時点ではプレミアムという現象が起きています。プレミアムとは、現在のユーロ円のスポットレートよりも為替のフォワードレートが円安寄りになっているのです。

これはどういうことかというと、日本の投資家がユーロ円で為替ヘッジを行った場合、現在の為替レートも有利なレート(ユーロ高日本円安)で、為替レートを固定することができるということです。

ニッセイ基礎研究所の「利回り確保が困難になったヘッジ付き外国債券」に、このような記載がございます。

為替変動リスクを回避することで逆に利回りの向上が期待できるヘッジ付き欧州ソブリン債への投資であればプラスの利回りが享受できるものがある。

出所:利回り確保が困難になったヘッジ付き外国債券

このあたりのことを個人投資家の方が感覚として得るには、いわゆる外国為替証拠金取引業者のスワップポイント見ると分かると思います。

FX会社さんによっては、現在2019年7月時点で、ユーロ円をショートすると、スワップポイントが受け取れるケースがあると思います。

外国為替証拠金取引業者さんは、為替のポジションを、トムネと呼ばれる短期の為替フォワード取引を使って、ロールしていっているのですが、為替フォワードが関係しているため、このスワップポイントでプレミアムの恩恵を享受できるのです。(この為替のロールは少し専門的なことになりますが、以下のページがよくまとまっています)

一般的には、外貨の金利よりも日本円の金利が低いため、為替のフォワードレートはディスカウントになり、ヘッジにコストがかかります。ヘッジにコストがかかるということは、期待リターンを引き下げる効果があります。

しかし通貨によってはディスカウントではなくプレミアムという現象が起きているということもあります。少し難しい部分ではあります。

まとめ

繰り返しになりますが、為替のヘッジというのはなかなか馴染みのない分野と感じる人が多いかと思います。

今回は為替ヘッジに実務として携わっていた私が実際に感じた部分をまとめてあります。

為替ヘッジは非常に有益なツールです。しかし、同時に覚えておかないといけないことは、日本円が通貨安になった場合、その為替差益を得ることができなくなってしまうことです。

富裕層と呼ばれる多くの人は通貨も分散して保有しています。つまり円安へのリスクを考慮しているということです。

必ずしも為替ヘッジだけを使うことは正解ではないのかもしれません。