「波乱の相場、どう臨む 景気や企業業績の悪化に備え」という記事が出ていたのですが、その中にこのような記述がありました。
ただ、今回の株安で肝を冷やした人は、資産配分の比率をいったん見直すことも大切だ。深野氏によると、「自分自身のリスク許容度を超えて投資してきた可能性がある」からだ。どれぐらいまでの下落に耐えられるかは、人によって異なる。価格変動リスクが大きい株式への投資比率を下げる対応などが必要になるだろう。
出所:「波乱の相場、どう臨む 景気や企業業績の悪化に備え」より
日経平均が再度20,500円を割り込んできており、またドル円も108円前半まで円高が進んできました。この状況を考えると確かにアロケーション(資産分配)の見直しは必要のようにも見えてきます。その上で、一旦はリスク回避の流れが強くなると思いますが、その中で我々投資家がどう対応すべきか、考えてみたいと思います。
目次
アロケーションの見直しは必要ではない
その人によって考え方は違うので絶対とは言いませんが、私はアロケーションの見直しは不要だと考えています。その理由を述べていきます。
そもそも悲観を加味してアロケーションを決めるべき
以前「「お金は寝かせて増やしなさい」 今までとは違うインデックス投資のおすすめ書籍」にて、水瀬氏の書籍にあったこのような言葉を紹介しました。
本当にあなた自身にとって最適な資本構成になっているかどうかは、あなたがそれで夜ぐっすり眠れるかどうかにかかっている
おすすめなのは、株がググッと上がったときに、プラスとマイナスを入れ替えて、同じだけ下がったら耐えられるかどうかと自問自答することです。
出所:「お金は寝かせて増やしなさい」より
そもそも投資が順調にうまく行くということはあり得ないことでして、その中で下落という自分の想定ではないことが起きるというシナリオにどれだけ対応できるかということが投資の重要な部分になってきます。
つまり冒頭の引用部分にある「今回の株安で肝を冷やした人」というのはそもそもリスクの取りすぎだったのでは、ということをまず考えるべきではあります。そして反省すべきではあるものの、多くの人はここでアロケーションの見直しは不要だと考えています。
金融市場の下落がいつまで続くか分からない
さて株式市場の下落や為替市場での円高方向への転換はたしかに見受けられるものの、それがいつまで、またいくらまで続くか明言できるでしょうか。これができないのであればアロケーションの見直しはするべきではありません。
通常インデックス投資を駆使したポートフォリオは、いわゆる「全張り」であります。つまり相場観を持たずに、金融市場の期待リターンという果実を享受することになります。どこの資産があがって、どこの資産が下がるということが分かっているのであれば、この「全張り」という方法はそもそも不要になります。
そこまで確信のある相場観をお持ちであれば、今すぐアロケーションの見直し、また相場下落時に利益の出る商品(例えば、先物のショートやプットオプション)といったものを駆使するべきです。しかし上昇を当てるのが難しいのと同様、下落を当てるのも非常に難しいということは忘れるべきではありません。
相場の上昇に乗り遅れる
ここで相場の格言を紹介したいと思います。
強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく
出所:楽天証券「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」より
もしこの言葉を聞いたことがなければ以下の記事を読んでみてください。
相場は下落し、悲観が高まってきたときに、上昇に転じることがあります。もしこの株式市場の下落によって資産の毀損が見られ、株式市場から撤退してしまった場合、今後上昇に転じたときにリターンを享受することができなくなってしまいます。
つまり相場の下落時には耐え、買い増しをすることによって、高いリターンを得ることができます。もしここで資産の売却を行ってしまった場合、「安値売り、高値買い」という相場では行ってはいけないことの1つを行ってしまうリスクがあります。
どうしてもアロケーションの見直しをすべきケースとは
とはいえ、冒頭にも述べたように個々人によって事情は違うでしょう。したがいまして、次にどのような人であれば資産分配を見直すべきかも少し見ておきたいと思います。
夜も眠れないほど不安
上で引用させていただいた水瀬氏のコメントを再掲いたします。
本当にあなた自身にとって最適な資本構成になっているかどうかは、あなたがそれで夜ぐっすり眠れるかどうかにかかっている
おすすめなのは、株がググッと上がったときに、プラスとマイナスを入れ替えて、同じだけ下がったら耐えられるかどうかと自問自答することです。
出所:「お金は寝かせて増やしなさい」より
つまりもし夜もぐっすり眠れないほど資産変動が気になるのであれば、今回を機にアロケーションの見直しを行うべきです。本来はここで行うべきではありませんが、もしどうしてもということであれば、リスク許容度の見直しのきっかけとして、アロケーションの見直しは正しい選択だと思います。
近い将来にお金が必要
近い将来にお金が必要になるケースの人も資産の見直しは行うべきだと思います。相場の下落がいつまで続くか分かりません。一時的かもしれないですし、長期間に渡るかもしれません。
いわゆる「バイ・アンド・ホールド」方式は、相場が戻って、再度上昇することを待つことを意味します。相場が戻る前にその金融資産を使う必要がある方も今からリスクの高い資産から低い資産への移行ということは必要になってきます。
私のおススメ
ここまでの議論をまとめると、もちろん「アロケーションの見直し」が必要な方もいらっしゃるかとは思いますが、私は多くのケースでは不要と考えています。
そして私が提案したい今行うべき施策は、リバランスです。
分散投資を行っている方であれば、おそらく目標の資産の分配比率と、実際の資産の分配比率で乖離が出てきているはずです。現在、米国の10年債金利が2.13%水準であることからも分かるように、株安・債券高となってきています。
もし債券である程度のリターンが出てきているのであれば、リバランスを行い、目標の資産分配比率に戻すことが必要です。「リバランス」は主に2つの方法のいずれかで行います。
- 上昇資産の売却と同時に下落資産の購入
- 下落資産だけを購入し、比率を戻す
もし資産に余裕があるのであれば、2番を行うべきです。なぜならば上昇資産の売却(利益確定)は、通常の口座であれば税金がかかるからです。
しかし、いずれにしろリバランスは行うべきだと考えています。
このような時にこそ、自身の決めた資産分配比率を信じ、「目標の資産の分配比率と、実際の資産の分配比率の乖離を埋める」という作業を行うべきだと考えています。