金利スワップのデルタはリスク指標であり、PnLに直結するもの!

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 今回は金利スワップでよく聞くデルタという部分です。金利スワップのトレーダーも為替のトレーダーなどと同じで基本的には、顧客と取引を行った場合、逆向きの取引をブローカーと行いポジションをクローズ(利益確定あるいはロスカット)しようとします。そういった収益の確保の仕方もあるのですが、今回は金利商品をポートフォリオとして考えたときに、どのようにして損益が出るのか考えてみたいと思います。

1. スワップトレーダーはカーブへの感応度で考えている

オプションの時には、オプションが行使される確率というお話をさせていただきましたが、金利スワップの場合デルタはカーブが1bp(bpはベーシスポイントで、1/100%を指します)動いた時の、時価の変化を表しています。
 
例えばあるスワップトレーダーは以下のようなリスクを持っているとします。
(便宜上非常にシンプルにしています)
 
1Y +1000円
3Y -3000円
5Y +4000円
10Y +10000円
 
上の数字はカーブが1bp動いたときに自分のポートフォリオの時価がどのくらい動くかということです。合計すると+12000円です。
 
したがいまして、カーブが1bp上がってくれれば、この人は12,000円儲かることになるのです。逆にカーブが1bp下がってしまえば、12,000円の損をすることを意味しています。
 

2. カーブの動きが損益に直結する

実際のマーケットを見ると、カーブが全体で同じ方向に動くということはありません。例えば3Yは上がったけど、10Yは下がったということはよくあります。そのため、このリスク(デルタ)をどういう風に組むのかがトレーダーとしての腕の見せ所になってきます。
 
一つの考え方は、近い年限のものは同じ方向に動くという考え方を使うことです。どういうことかというと、7Y、8Y、9Yのところは似た動きをしがちです。したがいまして、例えば以下のようにポジションを組むとリスクを最小限に抑えることができます。
 
7Y +5000円
8Y -10000円
9Y +5000円
 
実際イールドカーブは生き物のようです。フラットになったりスティープになったり、いろいろな動きをします。その中でどういったポジションをもってマーケットに立ち向かうのか、トレーダーは常に考えを巡らせています。
 

3. 債券や債券先物も組み合わせてカーブの動きに対するヘッジを行う

ここまではスワップトレーダーがどのようにリスクというものをとらえているかという点に焦点を当ててきました。デルタリスクを見ることで、カーブの動きに対して自分のポートフォリオの損益を考えています。更に近いところの年限でデルタリスクを逆向きにすることで、リスクを下げることも選択肢の一つだと考えられます。
 
ここからはスワップと債券の両方でポートフォリオを考えていきたいと思います。債券は価格が上がると利回りが下がるという特性を持っています。つまり債券を買い持ち(ロングポジション)していれば、金利が下がるほど利益が出ることになります。
 
一方で債券を売り持ち(ショートポジション)している場合、債券価格が下がるほど(また金利が上がるほど)利益がでるポジションとなります。これを考えると金利スワップと債券を取引することでリスクを抑えることができるようになります。
 
具体例を挙げてみます。例えば10Yのところのデルタリスクが+100万円のポジションを持っているとします。これは言い換えると10Yの所の金利が1bp上がると100万円儲かるものの、1bp下がってしまったら100万円損が出てしまうということになります。このデルタリスクを減らしたいと考えた場合、債券でヘッジするという選択肢があります。つまりデルタリスクを減らしたい分だけ債券を購入するのです。債券を購入すれば、金利が下がるほど儲かるポジションになるので、先ほどの金利が1bp下がれば100万円損を出すというポジションのリスクを減らすことができます。
 
もちろん債券先物も債券と同様の特性があるため、金利リスクのヘッジには使うことができます。債券先物ですと取引所に上場しているため、価格の透明性も高く、また流動性もあるため非常によく利用がされます。
 

4. 証券会社のトレーダーは常に見られている

証券会社のトレーダーは常に各部署から見られています。それはトレーダーが無茶なポジションを持つと、会社全体へのインパクトが大きいような損を出す可能性があるからです。そういう意味では、一般の投資家よりも損を出さないという点に関しては徹底がされています。
 
証券会社のフロントの取引は、マーケットリスクやクレジットリスク、コンプライアンスやオペレーション部に絶えずモニターがされ、何か妙な取引があるとシニアマネージメントに情報が吸い上げられるような体制をとっています。金融の第一線のプロがそこまでリスクに敏感な事実を考えると、我々個人投資家も損を出さないということがいかに大事かということが分かるかと思います。
 

5. 終わりに

今回はスワップトレーダーの観点から、金利リスク(デルタリスク)にどのように向かっているかまとめてみました。金利商品を扱っているトレーダーは常にカーブの動きに対する損益という観点から厳しくリスクが管理され、その中で収益を生み出そうとしています。またリスクに対して敏感になるという点に関しては、我々個人投資家も見習わないといけない点なのかもしれません。
 
大きな損を出してしまうと金融機関の人であればその組織の存続に関わる、また一般の方であれば家庭に大きな影響を出してしまう恐れがります。常にリスクというものに気を配り、いかにしてロスを出さないかが最終的に生き残るための重大な考え方なのかもしれません。
 
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