LCH / CME / JSCC 金利スワップ市場に出てきたクリアリングハウス間のスプレッド

f:id:finance_blog:20170905223343j:plain

今となっては業界の常識になりましたが、金利スワップの世界ではCCPと呼ばれるクリアリングハウス間でスプレッドが発生してしまっています。。例えば、JSCCでは金利が0.1%だったとしても、LCHでは0.12%になっていたります。今回は、こういったクリアリングハウス間でのスプレッド(ベーシスと呼ばれたりもします)について、見ていきたいと思います。

 

 

クリアーするとはどういうことか

まずそもそも金利スワップをクリアーさせるということがどういうことか考えてみたいと思います。一言で言うと、株で言う取引所のようなものに間に入ってもらい、カウンターパーティーリスクを減らそうという試みであります。

 

金利スワップはOTC取引(店頭取引)となるため、金融機関Aと金融機関Bが取引をするとお互いが直接取引を行っていました(こういった取引をバイラテラル取引と言います)。しかしリーマンショックの破綻に見られるように、過去のようにここの金融機関は潰れないだろうという考え方はもうできなくなってきました。

 

実際、マーケットではCVAといった相手のカウンターパーティリスクをpriceに反映させようという動きも出てきました。そこで、それぞれの金融機関でお金を出し合って運営しているクリアリングハウスに間に入ってもらえば、このカウンターパーティリスクというものを最小限にすることができるのではという考え方になりました。

 

補足ですが、もしCVAにご興味のある方がいらっしゃいましたら、以下の本はとても面白く読んでいただけるかと思います。

 

実際どういったクリアリングハウスがあるか

主なクリアリングハウスは主に3つです。1つ目が日本のJSCC、2つ目がロンドンのLCH、3つ目がアメリカのCMEです。この主要3大CCPで金利スワップのクリアリングというものが行われております。

 

CCP間のスプレッドが発生する要因

ここまでで金利スワップをクリアーさせるということでリスクを減らそうという動きや、そもそもどういったクリアリングハウスがあるのかを見てきました。 実は、現在それぞれのクリアリングハウスでのレートが異なってきてしまう現象が起きています。

 

(LCHとJSCCのレートの違いについて調べたところ、こちらのページがとてもよくまとまっていたので、紹介だけいたします)

 

www.clarusft.com

 

ではどうしてこのようなスプレッド(ベーシス)が生じてしまうのでしょうか。それはいくつか理由はありますが、大きな理由の1つに持ち込まれる取引の質が異なるということがあります。まずはJSCCから見てみたいと思います。JSCCは日本のクリアリングハウスになります。そうすると必然的に取引参加者は日本の金融機関になります。

 

日本の金融機関はリスクを好まないため、固定金利の受けを選好する傾向があります。いわゆる債券の買いと同じ経済状況になります。こうすることで変動金利の受けといった不確実なものではなく、将来的なキャッシュフローを確定することができます。

 

固定金利の受けに対する需要が高いということは、スワップレートが低下する要因になります。固定金利をもらいたいという人が多いということは、その固定金利を下げても欲しいという人が多いということになりますので、金利の低下につながります。

 

一方で欧米では日本ほど取引が一方向に傾くことは、あまりありません。欧米では特に低金利が続いている時代では金利先高観への期待も強く、固定金利払い・変動金利受けといったポジションも取られる傾向があります。そうすると、スワップレートは上がりやすくなります。このように投資家の需要が日本と欧米では異なることもあり、使われる金利で乖離が目立つようになってきました。

 

LCH-JSCCベーシスのポートフォリオへの影響は?

もし日本にメインの拠点がある円のトレーダーのポートフォリオが全てJSCCのカーブで時価評価を行っていた場合、スプレッドを加味することで、思わぬ損失が発生することがあります。

 

以下は先ほどのウェブサイトに掲載がされておりましたブルームバーグの画面サンプルになります。

f:id:finance_blog:20170905222058j:plain

このように各テナー毎にスプレッドが表示されています。これの調整ですが、過去記事の「金利のトレーダーは何を見ている。デルタでのポジション管理とヘッジについて。」でもご紹介させていただいた通り、スワップトレーダーは各テナーごとのカーブに対する感応度で管理を行っています。

 

したがいまして、例えば10Yの所のリスク(カーブが1bp動いた時のインパクト)が+10万円だった場合、もしCCP間のスプレッドが2bp(0.02%)だとすると、その時点で評価額は+20万円になります。

 

これはうまく行った例ですが、トレーダーは金利が下がると思っていれば、マイナス方向へのポジション(例えば-10万円 = 金利が1bp下がると10万円儲かる)といったポジションを持っているケースもあり、そうなるとこのスプレッドはネガティブに働きます。

 

各テナーごとにスプレッドが異なっておりますので、自分の持っているポートフォリオのデルタリスクにそれぞれのスプレッドを掛け合わせることで、インパクトを考えることができます。

 

まとめ

以前からCCP間のスプレッドというのは、考えられてはいましたが、これが顕著になったのはここ数年の話です。そこにうまく対応ができたか否かでそのトレーダー並びに金融機関の損益に大きなインパクトが出てきたことでしょう。

 

金融業界では常に新しいトレンドが出てきています。そこがビジネスチャンスでもあり、そこに対応できたトレーダーが結果的には生き残っていくことになります。今までには見られなかった現象というのも、散見されるようになってきていますので、情報を集め、マーケットの注目点をいち早く見つけていくことが大事になってきています。

 

▼以下は関連記事です。

デリバティブ・金融工学について学ばれたい方がぜひ読んでおきたい本を10冊選びました。どれも良書ですので、ぜひ読んでみてください!

www.finance-tenshoku.com

スワップションの業界では一般的になったSABRモデル。日本語で紹介された文献は非常に少ない中、日本語で書かれた書籍があります。また海外で読まれているSABRモデルの参考書籍も紹介しております。非常におすすめでした。

www.finance-tenshoku.com

金利スワップの仲間である通貨スワップ。これがどういった取引であるか紹介をさせていただいています。外貨の調達手段として非常によく使われています。

www.finance-tenshoku.com